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法定相続情報証明制度とは?費用・申出方法・一覧図の書き方を解説

梶原 利恵 / 更新:2026-06-20
法定相続情報証明制度とは?費用・申出方法・一覧図の書き方を解説
親が亡くなって相続の手続きを始めると、まず戸籍集めの多さに驚く人が多いです。銀行、法務局、証券会社…と、行く先々で分厚い戸籍の束を出し直す。あれが本当にしんどい。法定相続情報証明制度は、その束の代わりに1枚の証明書(一覧図の写し)を使い回せる仕組みで、手数料は無料です。

私は司法書士事務所の補助者として8年、相続の手続きをそばで見てきました。この制度を使うと、複数の手続きを同時に進められて時間がかなり縮みます。一方で、一覧図を自分で作るとやり直しになりやすいポイントもある。

この記事では、制度の意味と仕組み、無料の中身、申し出られる人と法務局、一覧図の書き方、つまずきやすい点までまとめました。読み終えたら、自分のケースで使うかどうか判断できるはずです。

法定相続情報証明制度とは?まず結論から

法定相続情報証明制度とは?相続手続きをスムーズに進める方法
法定相続情報証明制度とは?相続手続きをスムーズに進める方法

ひとことで言うと、戸籍の束の代わりになる「相続関係の証明書」を法務局が無料で出してくれる制度です。相続人が戸籍一式と一覧図を法務局へ提出し、登記官が中身を確認したうえで、認証文の付いた写しを交付します。

「法定相続情報一覧図」で相続人を証明する仕組み

中心になるのが「法定相続情報一覧図」です。誰が亡くなって、誰が相続人なのかを、家系図のように1枚にまとめた書類だと思ってください。

この一覧図に登記官の認証文が付くと、「この相続関係は戸籍と合っています」というお墨付きの証明書になります。だから、いちいち戸籍を全部見せなくても、この写し1枚で相続人を証明できる。

戸籍の束を何度も出し直す負担がなくなる

制度の狙いはここです。法務省は、戸除籍謄本の束を相続登記やほかの相続手続で何度も提出し直す手間を減らせると案内しています。

実際、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどると、古い改製原戸籍まで含めて10通近くになることも珍しくありません。あの束を銀行ごとに出して返してもらって、また次へ…という往復が要らなくなる。これは大きいです。

制度ができた背景と相続登記義務化との関係

この制度は平成29年5月29日に始まりました。背景には、相続登記がされないまま放置され、所有者がわからない土地が増えた問題があります。

そして令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に登記を申請する必要があります。一覧図はこの相続登記でそのまま使えるので、義務化と相性がいい制度です。

法定相続情報証明制度のメリットとデメリット

正直に言うと、この制度はメリットが大きく、デメリットは「最初の一手間」に集約されます。順番に見ていきます。

法定相続情報証明制度のメリットとデメリット

相続手続きの必要書類を減らせる

一覧図の写しは、相続登記だけでなく、ほかの行政庁や金融機関の相続手続にも使えると法務省が案内しています。戸籍の束をそのつど提出する必要がなくなり、必要書類がぐっと減ります。

複数の手続きを同時並行で進められる

戸籍の束は1セットしかないので、本来なら銀行Aで使い終わってから銀行Bへ、と順番待ちになります。

ところが一覧図の写しは必要な枚数を無料でもらえます。私が現場で一番ありがたかったのはここで、A銀行・B銀行・法務局へ同時に書類を回せる。手続き全体の期間が一気に縮みます。

申出に手間がかかるなどのデメリット

デメリットは、結局のところ戸籍を全部集めて一覧図を自分で作る必要がある点です。集める戸籍の量は通常の相続手続きと変わりません。

さらに、相続放棄や遺産分割の「結果」までは一覧図に書けません。誰が何を相続したかは別途、遺産分割協議書などで示す必要があります。一覧図はあくまで「法律上の相続人は誰か」を証明する書類です。

この制度が向いている人・向いていない人

私の感覚では、向き不向きははっきり分かれます。下の表にまとめました。

法定相続情報証明制度が向いている人・向いていない人
タイプ向き理由
銀行・証券など手続き先が複数ある向いている写しを同時に回せて期間が縮む
不動産の相続登記をする向いている登記にそのまま使える・義務化対応
手続き先が1か所だけあまり向かない一覧図を作る手間が見合わないことがある
相続人が1人だけあまり向かない証明する相続関係が単純で恩恵が小さい

費用はかかる?手数料と司法書士に頼んだ場合の相場

一番気になるお金の話です。結論、一覧図の写しの交付そのものは無料。ただし「無料」が指すのはここだけで、戸籍集めの実費は別にかかります。

費用はかかる?手数料と司法書士に頼んだ場合の相場

一覧図の写しの交付は無料

法務省は、法定相続情報一覧図の写しの交付手数料は無料だと明記しています。何枚もらっても、追加で頼んでも、写しそのものには費用がかかりません。

戸籍収集などで実費がかかる場面

無料なのは写しの交付だけです。一覧図を作るために集める戸籍謄本や住民票には、自治体に支払う発行手数料がかかります。

被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどると、本籍地が複数の市区町村にまたがることが多く、郵送請求の定額小為替や切手代も積み重なります。ここは制度を使っても使わなくても必要になる実費です。

司法書士に依頼した場合の報酬の目安

戸籍集めや一覧図作成を司法書士に任せることもできます。ただ報酬は事務所ごとに自由設定で、公的に決まった相場はありません。

ここで架空の金額を出すのは不誠実なので避けます。私が見てきた範囲で言えるのは、一覧図作成単体の依頼か、相続登記とセットかで費用が変わるということ。見積もりを取るときは「戸籍収集まで含むか」「一覧図のみか」を必ず確認してください。

申出ができる人と申し出る法務局

法定相続情報証明制度について
法定相続情報証明制度について

誰が、どこの法務局に申し出るのか。ここを間違えると窓口で止まります。意外と知られていない管轄のルールも含めて整理します。

申出ができるのは相続人本人

申出ができるのは、被相続人の相続人です。相続人が複数いる場合は、そのうちの1人が代表して申し出ることができます。全員で行く必要はありません。

代理を頼める専門家と親族の範囲

相続人本人が行けない場合は、代理人に頼めます。代理人になれるのは、相続人の親族(配偶者や子など一定の親族)と、資格者代理人です。

資格者代理人とは、司法書士・弁護士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士のことです。相続を扱う専門家に依頼すれば、戸籍収集から申出まで一括で任せられます。

申し出られる4つの管轄法務局

申し出る法務局は、どこでもよいわけではありません。次の4つのいずれかを管轄する法務局から選べます。

申し出られる法務局(いずれか1つを選ぶ)
選べる場所内容
被相続人の本籍地亡くなった方の最後の本籍地
被相続人の最後の住所地亡くなった方が最後に住んでいた場所
申出人の住所地申し出る相続人が住んでいる場所
被相続人名義の不動産の所在地相続する不動産がある場所

自分の住所地でも申し出られるのは便利です。遠方の本籍地までわざわざ行かなくて済みます。

郵送で申し出る方法と手順

窓口に行かず、郵送で申し出ることもできます。集めた戸籍一式、一覧図、申出書を管轄の法務局へ郵送します。

写しを郵送で受け取りたい場合は、返信用の封筒と切手を同封します。提出した戸籍の原本も一緒に返してもらえるので、返却分の重さを見込んで切手を多めに用意すると安心です。

申出から交付までの流れと必要書類

ここからは実際の進め方です。大きく分けて、戸籍を集める・一覧図を作る・申し出る・写しを受け取る、の4ステップ。交付までの目安はおよそ1週間です。

申出から交付までの流れと必要書類

必要な戸籍・住民票などを集める

最初の山場が書類集めです。法務省・司法書士会の案内では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類、相続人全員の現在の戸籍謄本、住民票の写しなどを準備します。

被相続人の戸籍は、亡くなったときの本籍地から1つずつ前へさかのぼって集めます。途中で他県へ転籍していると、その自治体にも請求が必要です。ここで時間がかかります。

法定相続情報一覧図を作成する

集めた戸籍をもとに、相続人を一覧図にまとめます。被相続人の氏名・生年月日・死亡年月日・最後の住所、相続人それぞれの氏名・生年月日・続柄などを記載します。

一覧図は自分で作れます。法務局のサイトに記載例のひな形が用意されているので、自分の家族構成に近いパターンを選んで作るのが確実です。

申出書を書いて法務局に申し出る

申出書には、申出人の住所氏名、被相続人との続柄、利用目的、必要な写しの枚数などを書きます。これを戸籍一式・一覧図と一緒に提出します。

申出人の住所氏名を確認するため、運転免許証のコピーなど本人確認書類も必要です。コピーには「原本と相違ない」と書いて署名します。

一覧図の写しの交付(約1週間・保存5年)

提出後、登記官が戸籍と一覧図の内容を照らし合わせ、合っていれば認証文付きの写しが交付されます。

日本司法書士会連合会は、一覧図の写しについて、申出から5年間は無料で再交付を受けられると案内しています。最初に少なめにもらっても、後から追加できるということです。

一覧図の記載例とパターン別の書き方

つまずきやすいのが一覧図の書き方です。家族構成によって書き方が変わるので、よくあるパターンを具体的に見ていきます。

一覧図の記載例とパターン別の書き方

基本の記載例とテンプレートの考え方

基本形は、被相続人を中心に置き、そこから配偶者と子へ線を伸ばす家系図です。各人の生年月日と続柄を添えます。

テンプレートは法務局サイトの記載例をそのまま土台にするのが安全です。自己流のレイアウトより、見慣れた様式のほうが登記官の確認もスムーズで、補正も減ります。

数次相続・代襲相続・養子がいる場合

複雑なケースほど、書き方の決まりがあります。代表的な3つを表にしました。

パターン別の書き方のポイント
ケース内容記載のポイント
代襲相続相続人になるはずの子が先に亡くなり、その孫が相続亡くなった子を経由して孫を記載し、続柄を正確に書く
養子がいる被相続人に養子縁組した子がいる養子も実子と同じく相続人として記載する
数次相続相続手続き中に相続人がさらに死亡原則は被相続人ごとに一覧図を分けて作成する

数次相続は特に間違えやすいところです。1枚にまとめて書こうとすると関係がぐちゃぐちゃになるので、被相続人ごとに分けて作るのが基本だと覚えておいてください。

一覧図に記載できる人・できない人(相続放棄者など)

ここは誤解が多いので強調します。一覧図には「法律上の相続人」を書きます。相続放棄をした人も、放棄の前は相続人なので一覧図には記載されます。

一覧図は「放棄したかどうか」までは反映しません。だから放棄者が載っていても間違いではない。一方、相続人の住所は記載するかどうかを選べます(任意)。住所を載せると、その確認のため住民票の写しが必要になります。

つまずきやすいポイントと使えない場面(独自解説)

法定相続情報証明制度の申請手続3STEP!
法定相続情報証明制度の申請手続3STEP!

ここからは、現場で実際にやり直しになった例をもとに書きます。教科書には載りにくい、つまずきの実例です。

やり直しになりやすい記入ミスと予防策

一番多いのが、戸籍の取り漏れです。出生までさかのぼったつもりで、途中の改製原戸籍が1通抜けている。これだと相続人を確定できず、補正になります。

次に多いのが続柄の書き方です。子を「長男」「長女」と書くか「子」と書くかで、後の手続きに影響することがあります。続柄欄は法務局の記載例どおりにそろえると無難です。

予防策はシンプルで、提出前に戸籍を死亡から出生まで一度通しで並べ、年月日がつながっているか確認すること。ここが切れていなければ、まず取り漏れはありません。

外国籍の相続人・戸籍が揃わないケース

被相続人や相続人に日本国籍がない場合、この制度は使えません。制度は日本の戸籍で相続関係を確認する仕組みのため、戸籍がない人が関わると対象外になります。

古い戸籍が戦災や災害で焼失していて揃わないケースもあります。この場合は、自治体が出す「焼失で交付できない」旨の証明などで補える可能性があるので、まず管轄の法務局に相談するのが早いです。

この制度が使えない手続き・限界点

一覧図は万能ではありません。前述のとおり、相続放棄や遺産分割の結果は証明できません。誰が何を取得したかは、別の書類で示す必要があります。

また、外国籍の相続人がいるケースで使えないのも限界点です。提出先によっては戸籍一式の提出を求める場合もあるので、手続き先に一覧図で足りるか事前に確認すると確実です。

再交付・訂正補正と法定相続情報番号の活用

再交付は、最初に申し出た本人が、5年以内なら無料で受けられます。枚数が足りなくなっても、戸籍を集め直す必要はありません。

交付された一覧図には「法定相続情報番号」が付きます。この番号は、相続登記をオンライン申請するときなどに、一覧図そのものの代わりに引用できる場面があります。番号がわかれば書類添付を省ける運用なので、控えておくと便利です。

法定相続情報証明制度に関するよくある質問

よくある質問

法定相続情報証明制度とは何ですか?
相続人が戸籍の束と一覧図を法務局に提出し、登記官が相続関係を確認したうえで、認証文付きの写しを交付する制度です。この写し1枚を、戸籍の束の代わりに相続登記や金融機関の手続きで使い回せます。平成29年5月29日に始まりました。
費用はいくらかかりますか?
法定相続情報一覧図の写しの交付手数料は無料です。何枚もらっても写しそのものに費用はかかりません。ただし無料なのは写しの交付だけで、一覧図を作るために集める戸籍謄本や住民票の発行手数料は別途必要です。司法書士に依頼した場合は別に報酬がかかります。
どうやって始めればいいですか?
まず被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人の戸籍・住民票を集めます。次にそれをもとに一覧図を作り、申出書と一緒に管轄の法務局へ提出します。法務局は被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産所在地のいずれかから選べ、郵送での申出も可能です。交付の目安は約1週間です。

最後にひとつだけ。手続き先が複数ある人ほど、この制度は効きます。戸籍を集める手間はどうせ発生するのだから、その戸籍で一覧図まで作ってしまうのが私のおすすめです。複雑な家族構成で不安なら、戸籍集めの段階で一度司法書士に相談しておくと、やり直しを避けられます。

法定相続情報証明制度に関するよくある質問
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梶原 利恵

元司法書士事務所スタッフ(補助者歴8年) ・ 相続・不動産登記分野の専門Webメディア編集者

司法書士事務所での補助者経験をもとに、相続登記・遺産整理の実務を取材・執筆。制度改正や現場の声を一次情報として丁寧に伝えることを大切にしています。

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