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相続登記

相続登記とは?義務化・費用・やり方を司法書士が徹底解説

梶原 利恵 / 更新:2026-06-18
相続登記とは?義務化・費用・やり方を司法書士が徹底解説
親が遺した家の名義をそのままにして、「手続きが面倒だし、急がなくてもいいだろう」と先延ばしにしていませんか。結論から言うと、2024年4月1日から相続登記は義務になりました。期限内にしないと10万円以下の過料の対象です。

私は司法書士事務所で8年、相続登記の補助者として実務に携わってきました。その経験から、つまずきやすいポイントや、自分でやる場合と司法書士に頼む場合の見極め方まで、できるだけ正直に書きます。

この記事で分かること:相続登記の意味、義務化の開始時期と過去の相続への適用、放置した場合の過料、費用相場、4ステップの手続きの流れ、必要書類、そして自分でやるか専門家に頼むかの判断材料です。

相続登記とは?基礎知識と義務化の概要

相続登記を自分でやってみたい!法務省が作った最新マニュアルを解説します
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まずは言葉の意味と、いつから義務になったのかを整理します。ここを押さえないと、自分に期限があるのかどうかすら判断できません。

相続登記の意味とやさしい言い換え

相続登記とは、亡くなった人(被相続人)が持っていた不動産の名義を、相続人へ変更する手続きです。

かみくだいて言えば「家や土地の持ち主の名前を、亡くなった親から自分に書き換える作業」。役所ではなく、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

相続登記の義務化はいつから始まったか

相続登記の申請義務化は、2024年4月1日に施行されました。

不動産を相続で取得した相続人は、原則として「不動産の取得を知った日から3年以内」に申請する義務があります。遺産分割協議で取得した場合は、その協議が成立した日から3年以内です。

過去の相続にもさかのぼって適用されるのか

ここが一番誤解されるところです。「うちの相続は昔のことだから関係ない」と思っている方が本当に多い。

答えははっきりしています。2024年4月1日より前に開始した相続も義務化の対象です。この場合は、2027年3月31日までに相続登記をする必要があると案内されています。

祖父母の代から名義が変わっていない、いわゆる「塩漬けの不動産」を抱えている家庭ほど、早めに動いたほうがいい。私の実感としても、古い相続ほど書類集めに時間がかかります。

相続登記を放置するとどうなる?罰則とリスク

義務化で一番気になるのが「やらなかったらどうなるのか」だと思います。過料という金銭的なペナルティと、それ以外の実害の両方を見ておきましょう。

相続登記を放置するとどうなる?罰則とリスク

10万円以下の過料の具体例

正当な理由なく期限内に相続登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。

「正当な理由」とは、たとえば相続人が極めて多数で戸籍収集に時間がかかる、相続人の間で争いがあって書類が揃わない、といったケースが想定されています。単に「忙しかった」「知らなかった」は通りにくいと考えてください。

放置で起こる売却・名義トラブル

正直に言うと、過料より怖いのはこちらです。名義が亡くなった人のままだと、その不動産は売れません。担保に入れてお金を借りることもできない。

さらに放置している間に相続人の誰かが亡くなると、相続人がねずみ算式に増えます。私が現場で見た中には、当初3人だった相続人が、数十年の放置で十数人に膨れ上がった例がありました。全員から実印と印鑑証明をもらう作業を想像してみてください。

経過措置と申請の猶予期間

前述のとおり、施行前に始まった相続には経過措置があり、2027年3月31日までという猶予が設けられています。

逆に言えば、この日付までに手をつけないと過料の対象に入りうる、ということ。期限が見えている今が、後回しにしてきた古い名義を片づける好機です。

相続登記のやり方を4つのステップで解説

ここからは実際の手順です。流れは大きく4ステップ。前提として、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本を集め、誰が相続人なのか(法定相続人の範囲と法定相続分)を確定させる必要があります。

相続登記のやり方を4つのステップで解説

相続する不動産を特定する

まず、どの不動産を相続するのかを正確に把握します。固定資産税の納税通知書や、法務局で取れる登記事項証明書を使います。

注意したいのが、自宅の敷地に接する私道の持分。納税通知書に載らないことがあり、見落とすと後でその部分だけ登記が漏れます。名寄帳(市区町村で取得)で確認しておくと安心です。

不動産を引き継ぐ相続人を決める

誰が不動産を取得するかを決めます。遺言書があればその内容に従い、なければ相続人全員で遺産分割協議をします。

協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が実印を押します。1人でも欠けると登記できません。

必要書類を集める(記載例つき)

必要書類は、遺産分割で取得するケースを例にすると次のとおりです。ケースによって増減します。

遺産分割協議による相続登記の主な必要書類
書類取得先ポイント
被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本本籍地の市区町村転籍があると複数の役所にまたがる
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村登記簿上の住所とのつながりを示す
相続人全員の戸籍謄本各相続人の本籍地相続人であることの証明
不動産を取得する人の住民票住所地の市区町村新しい名義人の住所として登記される
遺産分割協議書相続人が作成全員の実印を押す
相続人全員の印鑑証明書住所地の市区町村協議書の実印と照合する
固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村登録免許税の計算に使う

登記申請書は法務局の様式に沿って作ります。「登記の目的:所有権移転」「原因:令和○年○月○日相続」「相続人:(被相続人 ○○) ○○ 印」といった形で、不動産の表示は登記事項証明書どおりに正確に書き写すのがコツです。1字でも違うと補正になります。

管轄の法務局へ登記申請する

書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。窓口・郵送・オンラインのいずれかです。

申請時に登録免許税を納めます。書類に不備があると「補正」の連絡が来るので、提出後しばらくは法務局からの電話に出られるようにしておくと安心です。

ケース別の相続登記の進め方

不動産の相続登記を自分で行いました!手順公開
不動産の相続登記を自分で行いました!手順公開

相続は家庭ごとに事情が違います。遺言の有無、名義の決め方、相続人に判断能力の問題がある場合など、つまずきやすいケースを整理します。

遺言書がある場合とない場合の違い

遺言書があると、遺産分割協議が不要になることが多く、手続きが一気に楽になります。協議書も相続人全員の印鑑証明も原則いりません。

ただし自筆の遺言書は、家庭裁判所の「検認」が必要な場合があります(法務局の保管制度を使っていれば検認不要)。遺言書を見つけたら、勝手に開封せずまず確認を。

単独名義と共有名義の選び方

不動産を1人の名義にするか、複数人の共有にするかの選択です。私が相談を受けたときは、原則として単独名義を勧めます。

共有は一見公平に見えますが、将来その不動産を売る・建て替えるときに共有者全員の同意が必要になります。共有者の誰かが亡くなれば、その持分にまた相続が発生し、関係者が増える。後々の手間を考えると、誰か1人が引き継ぎ、ほかの相続人には現金で調整するほうがすっきりします。

数次相続・代襲相続など複雑なケース

数次相続とは、登記しないうちに相続人がさらに亡くなり、相続が重なった状態。代襲相続は、本来の相続人が先に亡くなっていて、その子が代わりに相続するケースです。

どちらも戸籍をさかのぼって相続人を一人残らず確定する必要があり、自力では正直つらい場面です。戸籍が何十通にもなることもあります。ここは無理せず司法書士に頼むラインだと考えています。

認知症・未成年者が相続人にいる場合

相続人に認知症などで判断能力が不十分な人がいると、その人は遺産分割協議に参加できません。家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。

未成年者の場合は、親が同じ相続の当事者だと利益が対立するため、特別代理人の選任が必要です。いずれも時間がかかるので、該当しそうなら早めに専門家へ相談してください。

相続登記にかかる費用と期間の目安

費用は大きく分けて、登録免許税・書類の取得費用・司法書士への依頼料の3つです。順に見ていきます。

相続登記にかかる費用と期間の目安

登録免許税の計算方法と評価額の調べ方

登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を基準に課税されるのが一般的です。評価額は、市区町村で取得する固定資産評価証明書か、納税通知書に同封の課税明細書で確認できます。

具体的な税率は、国税庁・法務省の最新の公式情報で確認してください。本記事では渡された一次情報に税率の公式記載がないため、数値の断定は控えます。評価額を控えたうえで法務局や司法書士に確認するのが確実です。

書類取得費用と司法書士への依頼料

戸籍謄本や住民票の取得には、1通あたり数百円の手数料がかかります。出生からの戸籍を集めると枚数が増えるため、ここも積み重なります。

司法書士への依頼料は事務所やケースの複雑さで変わるため、見積もりを取って比較するのが基本です。金額は事前に必ず確認してください。

ケース別の費用シミュレーション

金額感をつかむために、費用が変わる要因を整理しました。実額ではなく「何で増減するか」の目安です。

相続登記の費用が変わる主な要因
要因費用への影響コメント
不動産の評価額登録免許税が増減評価額が高いほど税額が上がる
戸籍の通数書類取得費が増減古い相続・転籍が多いと増える
相続人の人数印鑑証明等が増える遠方の相続人がいると郵送の手間も
手続きの複雑さ司法書士報酬が増減数次相続・代襲相続は加算されやすい

申請から完了までの所要日数

登記申請を出してから完了までの期間は、法務局の混み具合で変わります。私の経験上、書類に不備がなければ1〜2週間程度で完了することが多い印象です。

ただし、ここに含まれないのが戸籍集めや遺産分割協議の時間。実際はこの「準備」のほうが何倍も時間がかかります。トータルでは数か月単位を見ておくと現実的です。

自分でやるか司法書士に頼むかの判断

よく聞かれる「自分でできますか?」への答えは、ケース次第です。シンプルな相続なら自力も十分可能。複雑になるほど専門家の出番です。

自分でやるか司法書士に頼むかの判断

自分でやる場合と依頼する場合の比較

自分でやる場合と司法書士に依頼する場合
観点自分でやる司法書士に依頼
費用実費のみで安い報酬が加わる
手間戸籍集め・書類作成を全部自分でほぼ任せられる
ミスのリスク補正で手戻りが起きやすい専門家がチェック
向くケース相続人が少なくシンプル数次相続・遠方・争いあり

私の率直な意見を言えば、相続人が自分1人〜数人で全員が協力的、不動産も近所、というケースなら自分でやってみる価値は十分あります。逆に数次相続が絡む、相続人が遠方や多数、判断能力の問題がある人がいる——このいずれかに当てはまるなら、最初から頼んだほうが結局は早くて安全です。

オンライン申請の手順

相続登記は「登記・供託オンライン申請システム」からも申請できます。専用ソフトをインストールし、申請者情報を登録、申請書データを作成して送信する流れです。

正直、初めての人には設定のハードルが高めです。1回きりの相続登記のためにオンライン環境を整えるなら、窓口や郵送のほうが手っ取り早いと感じる方も多いはずです。

法定相続情報証明制度・相続人申告登記の活用

法定相続情報証明制度は、戸籍一式と相続関係を示す一覧図を法務局に提出すると、相続関係を一枚で証明する「法定相続情報一覧図の写し」を発行してもらえる制度です。これがあると、銀行や複数の手続きで戸籍の束を何度も出さずに済みます。

相続人申告登記は、義務化に伴って創設された制度です。期限内に遺産分割がまとまらないとき、「自分が相続人です」と法務局に申し出ることで、ひとまず登記申請義務を果たしたものとみなしてもらえます。オンラインでも申出可能で、押印・電子署名は不要です。

注意点が1つ。相続人申告登記で義務を果たしたとみなされるのは、申し出た本人だけです。ほかの相続人の義務は別。あくまで「過料を避けるための応急処置」と捉え、正式な相続登記は後できちんと行う前提で使ってください。

よくある失敗・トラブル事例と回避策

相続登記を自分で行う方法を解説!簡単に完結できる方法もご紹介【better相続】
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現場でよく見てきた、つまずきやすい3つの場面と対処法をまとめます。先に知っておくだけで防げるものばかりです。

遺産分割協議がまとまらないときの対処

相続人の間で話がつかないと、登記は前に進みません。まずは家庭裁判所の遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて話し合います。

調停でも合意できなければ審判に移り、裁判所が分け方を決めます。ただ、ここまで来ると時間も労力もかかる。協議が長引きそうなら、前述の相続人申告登記で過料リスクだけ先に外しておくのが現実的です。

相続放棄をした場合の登記の扱い

相続放棄をした人は、最初から相続人でなかった扱いになります。よって、その人が不動産を相続する登記は発生しません。

気をつけたいのは、放棄は家庭裁判所への申述が必要で、原則として相続を知ってから3か月以内という期限があること。「いらないから何もしない」では放棄になりません。

相続登記後に必要な住所変更登記

相続登記が終わって一安心、で見落とされがちなのが住所変更登記です。所有者の住所変更登記も義務化が進んでいます。

あわせて、2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まると案内されています。本人や相続人の請求で、その人名義の不動産を全国まとめて一覧で証明してもらえる制度です。「どこに不動産があるか分からない」という相続の悩みに効く制度なので、覚えておいて損はありません。

相続登記に関するよくある質問

最後に、相談現場で特によく聞かれる3つにまとめて答えます。

相続登記に関するよくある質問

よくある質問

相続登記とは何ですか?
亡くなった人が所有していた不動産の名義を、相続人へ変更する手続きです。不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。2024年4月1日から申請が義務化され、原則として取得を知った日から3年以内に行う必要があります。
相続登記の費用はいくらですか?
主に登録免許税・書類取得費・司法書士報酬の3つです。登録免許税は固定資産税評価額を基準に課税されるのが一般的なので、評価額によって変わります。具体的な税率は国税庁・法務省の公式情報で確認し、報酬は事務所ごとに見積もりを取って比較してください。
相続登記の始め方は?
まず相続する不動産を納税通知書や登記事項証明書で特定し、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確定します。次に誰が取得するかを遺言や遺産分割協議で決め、必要書類を揃えて管轄の法務局へ申請します。期限内に遺産分割がまとまらないときは、相続人申告登記で義務だけ先に果たす方法もあります。

古い名義を放置している方は、まず納税通知書を引っ張り出して不動産を確認するところから。それだけで、自分が何をすべきかがぐっと見えてきます。迷ったら、期限が来る前に一度司法書士へ相談してください。

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梶原 利恵

元司法書士事務所スタッフ(補助者歴8年) ・ 相続・不動産登記分野の専門Webメディア編集者

司法書士事務所での補助者経験をもとに、相続登記・遺産整理の実務を取材・執筆。制度改正や現場の声を一次情報として丁寧に伝えることを大切にしています。

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